あかるい職場応援団
厚生労働省

「社内でパワハラ発生! 人事担当の方」他の企業はどうしてる?

【第14回】
ハラスメント防止で若い社員の離職率が下がった ―地域密着のスーパーマーケットを経営するS社

取組のポイント 所在地

青森県

  1. 毎年実施するアンケートで実態把握
  2. 朝礼で向き合って握手
  3. 何でも相談窓口で相談対応
業種

小売業

従業員数

約540人

地域に密着したスーパーマーケットを経営するS社。ハラスメントの問題が起きると、地域での信用と貴重な人材を失うばかりでなく、結果的に業績にも影響が出て、会社にとって大きな損失となるとおっしゃる取締役管理部長にお話を伺いました。

毎年実施するアンケートが抑止効果を生む

10年ほど前に、セクシュアルハラスメントが原因で生産性が低下したり、人間関係が悪化して離職者が出るなどの事実が確認されたことで、セクシュアルハラスメント対策に取り組むことになり、最初に無記名でのセクハラアンケートを実施しました。
結果として、それまで見えていなかったセクシュアルハラスメントの実態を把握することができ、実際に当事者へのヒアリングを行い、対象者を処分したこともありました。
アンケートを毎年実施するという活動が功を奏し、セクシュアルハラスメントの相談件数が減少してくる中、5年前に従業員からパワーハラスメントについて実態を把握してほしいとの意見があり、パワーハラスメントに関するアンケートについても開始することとしました。調査は学生アルバイトやパートを含む全従業員で回収率は7割程度ですが、現場の状況を把握するのに大いに役立っています。

セクハラ・パワハラについての従業員アンケート

一方で、毎年アンケートがあることで、アンケートに記入することがはけ口となり「すっきりした」と感じている従業員もいたり、従業員同士で冗談交じりに「アンケートに書くよ」と言い合える職場環境が作られるなど、アンケートの実施自体がハラスメント防止に効果があるように感じています。

中間管理職以上を対象に研修

毎年のアンケートの冒頭に、トップの方針として「ハラスメントは許さない」というメッセージを入れ、従業員全体に広くハラスメント防止の意識づけをしています。最近はどういう行為がハラスメントに当たるのかという解説も加えて、啓発の役割も持たせています。また、就業規則にもハラスメントに当たる禁止行為を規定した上、懲罰については別途規定を定めています。
さらに、各店舗の部門長以上に対しては、外部講師によるコミュニケーションセミナーを実施し、コーチングの勉強や相談事例のディスカッション、傾聴の訓練など、様々な教育をしています。今年は心理検査の一つであるエゴグラムを用いて、思考・感情・行動のパターンを知り、自分自身への気付きを喚起し、人とのコミュニケーションの取り方の偏りやゆがみを知り、自分自身の成長につながる研修を実施しました。今は一般社員やパート社員も希望があれば参加できるようにしています。
コミュニケーションの強化という意味では、朝礼時に向き合って大きな声で挨拶をし、向かいの人と「今日も一日、よろしくお願いします」という気持ちを込めて握手を交わすという取組もしています。

相談担当として産業カウンセラーの資格を取得

相談窓口はセクシュアルハラスメント対策を始めた頃から設置していますが、「何でも相談窓口」としてハラスメントに限らず何でも相談することができるようにしており、更衣室や休憩室に連絡先を掲示しています。
現場で上司に直接相談すると、相談内容が職場に広まってしまう心配があるので、本部が相談窓口として対応していますし、社外の専門機関も紹介しています。

何でも相談室

社内窓口への相談は月に1~2件程度。そのうちハラスメントに関するものは年間5~6件ほどです。当初は相談窓口も事実確認にとどまっていたのですが、窓口担当者は外部の相談対応セミナーに参加し、私自身も産業カウンセラーの資格を取得し、相談者の気持ちに寄り添って相談を受けるように心がけていることで相談者の納得も得られるようになり、相談対応の終結のしかたが変わってきたように感じています。

ハラスメントが少なくなって社員の離職率が低下

地域の方々が利用されるスーパーマーケットですし、従業員の約7割が地元の方ですので、ハラスメントなどの人間関係が理由で退職者が出ることは、地域での信用を損ないかねません。最近はネットワークの発達により、会社にとって良いことも悪いことも、事実かどうかも関係なく、情報が瞬時に広がってしまうので、会社の防衛という意味でもハラスメント対策は重要だと考えています。
長年の取組の成果で、ハラスメントが少なくなってきたと思います。社長や専務など、首脳陣の姿勢も変わってきて、指導をした後に声かけ等ちょっとしたフォローを入れるなどの配慮が見られ、そういう雰囲気が部下にも伝わってきているようです。おかげさまで若い社員の離職率が低下してきました。以前は、入社して3年後には約半数が離職していたこともありましたが、現在では10%程度になりました。

事例をお聞きして・・・

実態把握のために実施しているアンケートを、啓発のためのツールとして活用したり、研修にも工夫をして受講者が納得しやすい形にしたり、一つ一つの施策を自分たちで手作りすることで、より職場の状況や社会の流れに合った取り組みをされていました。会社の業績に直結する、という危機意識が、こうした活動の原動力になっていると感じました。

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